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宮部みゆき「ペテロの葬列」 [読]

ペテロは、一度はキリストを裏切ったが、それを恥じて戻り共に殺された人という。その人の葬式に参列するのはどのような思いを背負った人間だろう。登場するのはそんな人たちだという意味だろうか。
老人施設帰りの客を乗せた路線バスが乗っ取られ、思わぬ形で事件は終わる。ところが、人質達が犯人に言われた、冗談だと思われたことが実行される。人質達が調べた結果、背景に投資詐欺があったことが明らかになる。
小泉孝太郎が主演したテレビドラマの次作にあたり、俳優達の姿がダブって困ったが、調査を進める中で人間の様々な顔が書かれていて、実に面白い。
事件の全貌が明らかになり、ようやく終わったはずなのに、思いがけないつらい結末を迎える。さりげなく書かれてきた出来事が、重い伏線になっていたことが分かる。易しい言葉でわかりやすく書かれていながら、すごい力量だ。
作者は主人公杉本三郎に深い思い入れがあるのではないか。彼が年齢を重ね、これからも、誰もが抱える人間の善と悪、闇と光を書き続けてくれるような気がする。

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