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乙川優三郎「トワイライト・シャッフル」 [読]

房総半島の太平洋に面した小さな漁村。夏にはレジャー客で賑わい、高台には別荘が並ぶ。この街を舞台に繰り広げられる13の短編集。
夫の介護におわれる海女、夫に先立たれたイギリス人の妻、夫が単身赴任の妻、大成できなかったジャズメン、別荘を相続した姪、ガンと闘う女、別れを予感するカップル、難病の弟と暮らす若い女性、二人の男とつきあう女性編集者、夫が蒸発した女、不倫の果てに結婚した夫婦、交通遺児として育ち土建業を始めた男、外資系企業で働くブラジル人の女。
彼らの人生が綴られる。無駄な説明のない簡潔な文章だが、練り上げられた構成で、彼らの哀しみがしみじみと伝わる。
どれもすばらしいが、一番気に入ったのは、土建業の男が自分の家を建てようと決意する、「私のために生まれた街」。新聞の書評で知ったのだが、こうした本に出会って幸運だ。

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