しんしんと肺碧きまで海の旅 篠原鳳作 [詩]
凍鶴(いてづる)のごと長考の羽生九段 小山公商 [詩]
中秋の名月2022 [詩]
小綬鶏の見張る筍掘りて来つ 角田良子 [詩]
散歩道も満開 [詩]
平昌オリンピック終わる [詩]
ヨモツヒラサカスミレサク [詩]
頬白のさへずる春と [詩]
吉野弘「二人が睦まじくいるためには」 [詩]
詩集はほとんど読まないが、先月新聞で詩人の死が報じられていて、興味を持った。図書館で借りようとしたら、順番待ちで驚いた。
雪は自分の汚れを隠すために降るという詩や、若い妊婦さんを書いたものも良かったが、結婚式で使われるというこの詩がやはり印象に残る。むしろ切実な局面にある者に響くかもしれない。
--------------------
祝婚歌 (風が吹くと)
吉野弘
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい
雪は自分の汚れを隠すために降るという詩や、若い妊婦さんを書いたものも良かったが、結婚式で使われるというこの詩がやはり印象に残る。むしろ切実な局面にある者に響くかもしれない。
--------------------
祝婚歌 (風が吹くと)
吉野弘
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい
PL花火 [詩]
長谷川櫂「海の細道」 [詩]
朧月夜 [詩]
アンパンマンの歌 [詩]
震災追悼のテレビ番組は辛くて見られなかった。
新聞の記事で、当時ラジオ局が被災地へ音楽を届けようとし、子どもたちにはアンパンマンのテーマ曲を繰り返し流していたことを読んだ。
軽快なメロディーは思い出したが、こんなにも深い言葉だったとは知らなかった。
----------------------------------------------------------
「アンパンマンのマーチ」
やなせたかし作詞、三木たかし作曲
そうだ うれしいんだ いきる よろこび
たとえ むねのきずが いたんでも
なんのために うまれて
なにをして いきるのか
こたえられない なんて
そんなのは いやだ!
いまを いきる ことで
あつい こころ もえる
だから きみは いくんだ ほほえんで
そうだ うれしいんだ いきる よろこび
たとえ むねのきずが いたんでも
ああ アンパンマン やさしい きみは
いけ! みんなのゆめ まもるため
なにが きみの しあわせ
なにをして よろこぶ
わからないまま おわる
そんなのは いやだ!
わすれないで ゆめを
こぼさないで なみだ
だから きみは とぶんだ どこまでも
そうだ おそれないで みんなのために
あいと ゆうきだけが ともだちさ
ああ アンパンマン やさしい きみは
いけ! みんなのゆめ まもるため
ときは はやく すぎる
ひかる ほしは きえる
だから きみは いくんだ ほほえんで
そうだ うれしいんだ いきる よろこび
たとえ どんなてきが あいてでも
ああ アンパンマン やさしい きみは
いけ! みんなのゆめ まもるため
新聞の記事で、当時ラジオ局が被災地へ音楽を届けようとし、子どもたちにはアンパンマンのテーマ曲を繰り返し流していたことを読んだ。
軽快なメロディーは思い出したが、こんなにも深い言葉だったとは知らなかった。
----------------------------------------------------------
「アンパンマンのマーチ」
やなせたかし作詞、三木たかし作曲
そうだ うれしいんだ いきる よろこび
たとえ むねのきずが いたんでも
なんのために うまれて
なにをして いきるのか
こたえられない なんて
そんなのは いやだ!
いまを いきる ことで
あつい こころ もえる
だから きみは いくんだ ほほえんで
そうだ うれしいんだ いきる よろこび
たとえ むねのきずが いたんでも
ああ アンパンマン やさしい きみは
いけ! みんなのゆめ まもるため
なにが きみの しあわせ
なにをして よろこぶ
わからないまま おわる
そんなのは いやだ!
わすれないで ゆめを
こぼさないで なみだ
だから きみは とぶんだ どこまでも
そうだ おそれないで みんなのために
あいと ゆうきだけが ともだちさ
ああ アンパンマン やさしい きみは
いけ! みんなのゆめ まもるため
ときは はやく すぎる
ひかる ほしは きえる
だから きみは いくんだ ほほえんで
そうだ うれしいんだ いきる よろこび
たとえ どんなてきが あいてでも
ああ アンパンマン やさしい きみは
いけ! みんなのゆめ まもるため
春を恨んだりはしない [詩]
「眺めとの別れ」
ヴィスワヴァ・シンボルスカ作
/沼野充義訳
またやって来たからといって
春を恨んだりはしない
例年のように自分の義務を
果たしているからといって
春を責めたりはしない
わかっている
わたしがいくら悲しくても
そのせいで緑の萌えるのが止まったりはしないと
草の茎が揺れるとしても
それは風に吹かれてのこと
水辺のハンノキの木立に
ざわめくものが戻ってきたからといって
わたしは痛みを覚えたりはしない
とある湖の岸辺が以前と変わらず
-あなたがまだ生きているかのように-
美しいとわたしは気づく
目が眩むほどの太陽に照らされた
入り江の見える眺めに
腹を立てたりはしない
いまこの瞬間にも
わたしたちでない二人が
倒れた白樺の株にすわっているのを
想像することさえできる
その二人がささやき、笑い
幸せそうに黙っている権利を
わたしは尊重する
その二人は愛に結ばれていて
彼が生きている腕で
彼女を抱きしめると
思い描くことさえできる
葦の茂みのなかで何か新しいもの
何か鳥のようなものがさらさらいう
二人がその音を聞くことを
わたしは心から願う
ときにすばやく、ときにのろのろと
岸に打ち寄せる波
わたしには素直に従わないその波に
変わることを求めようとは思わない
森のほとりの
あるときはエメラルド色の
あるときはサファイア色の
またあるときは黒い
深い淵に何も要求しない
ただ一つ、どうしても同意できないのは
自分があそこに帰ること
存在することの特権-
それをわたしは放棄する
わたしはあなたよりも十分長生きした
こうして遠くから考えるために
ちょうど十分なだけ
-------------------------------------------------
池澤夏樹さんの著作「春を恨んだりはしない」で教えていただいた。
非礼は承知ながら、いつの日か、この詩も被災された方に受け容れてもらえるときが来ますように。
ヴィスワヴァ・シンボルスカ作
/沼野充義訳
またやって来たからといって
春を恨んだりはしない
例年のように自分の義務を
果たしているからといって
春を責めたりはしない
わかっている
わたしがいくら悲しくても
そのせいで緑の萌えるのが止まったりはしないと
草の茎が揺れるとしても
それは風に吹かれてのこと
水辺のハンノキの木立に
ざわめくものが戻ってきたからといって
わたしは痛みを覚えたりはしない
とある湖の岸辺が以前と変わらず
-あなたがまだ生きているかのように-
美しいとわたしは気づく
目が眩むほどの太陽に照らされた
入り江の見える眺めに
腹を立てたりはしない
いまこの瞬間にも
わたしたちでない二人が
倒れた白樺の株にすわっているのを
想像することさえできる
その二人がささやき、笑い
幸せそうに黙っている権利を
わたしは尊重する
その二人は愛に結ばれていて
彼が生きている腕で
彼女を抱きしめると
思い描くことさえできる
葦の茂みのなかで何か新しいもの
何か鳥のようなものがさらさらいう
二人がその音を聞くことを
わたしは心から願う
ときにすばやく、ときにのろのろと
岸に打ち寄せる波
わたしには素直に従わないその波に
変わることを求めようとは思わない
森のほとりの
あるときはエメラルド色の
あるときはサファイア色の
またあるときは黒い
深い淵に何も要求しない
ただ一つ、どうしても同意できないのは
自分があそこに帰ること
存在することの特権-
それをわたしは放棄する
わたしはあなたよりも十分長生きした
こうして遠くから考えるために
ちょうど十分なだけ
-------------------------------------------------
池澤夏樹さんの著作「春を恨んだりはしない」で教えていただいた。
非礼は承知ながら、いつの日か、この詩も被災された方に受け容れてもらえるときが来ますように。
貘(ばく) [詩]
中島みゆきが、かつて長門裕之、南田洋子夫妻が司会をしていた「ミュージックフェア」で、泣きながら「ホームにて」を歌ったのはもう30年以上も前のことだ。
田舎から出てきて一人暮らしの頃、偶然に見たのだが、今でも忘れられない。
昨年暮れに発売されたアルバムをようやく手にしたら、キムタクのドラマのテーマ曲よりも、こちらの方が昔を思い出してすっかり気に入ってしまった。
----------------------------------------------------------------
「バクです」
作詞、作曲/中島みゆき
バクです バクです 今の今からバクになる
バクです バクです バクになることにしたんです
あんたの 悪い夢を喰っちまいます
あんたの 怖い夢を喰っちまいます
あんたの つらい夢を喰っちまいます
あんたの 泣いた夢を喰っちまいます
バクはまったく平気なんです
痛くもかゆくもないんです
腹いっぱいになりすぎたなら
ふわりふわりと浮きそうだ
そしたらバクは夢を見るんだ そしたらバクは夢を見るんだ
笑ってるあんたの夢を見る
バクです バクです 今の今からバクになる
バクです バクです バクになることにしたんです
あんたの 悲しいことを喰っちまいます
あんたの 寂しいことを喰っちまいます
あんたの 苦しいことを喰っちまいます
あんたの 痛いことを喰っちまいます
バクはまったく悪(あく)もの喰いで
何んでも彼んでも喰うんです
心配されても その心配さえ
うまいうまいと喰いそうだ
バクは1人で喰い続けてる バクは1人で喰い続けてる
笑ってるあんたの夢を見るまで
バクの上に夢よ降り積め あんたの捨てたい夢よ降れ
バクは1人で喰い続けてる バクは1人で喰い続けてる
笑ってるあんたの夢を見るまで
バクです バクです 今の今からバクになる
田舎から出てきて一人暮らしの頃、偶然に見たのだが、今でも忘れられない。
昨年暮れに発売されたアルバムをようやく手にしたら、キムタクのドラマのテーマ曲よりも、こちらの方が昔を思い出してすっかり気に入ってしまった。
----------------------------------------------------------------
「バクです」
作詞、作曲/中島みゆき
バクです バクです 今の今からバクになる
バクです バクです バクになることにしたんです
あんたの 悪い夢を喰っちまいます
あんたの 怖い夢を喰っちまいます
あんたの つらい夢を喰っちまいます
あんたの 泣いた夢を喰っちまいます
バクはまったく平気なんです
痛くもかゆくもないんです
腹いっぱいになりすぎたなら
ふわりふわりと浮きそうだ
そしたらバクは夢を見るんだ そしたらバクは夢を見るんだ
笑ってるあんたの夢を見る
バクです バクです 今の今からバクになる
バクです バクです バクになることにしたんです
あんたの 悲しいことを喰っちまいます
あんたの 寂しいことを喰っちまいます
あんたの 苦しいことを喰っちまいます
あんたの 痛いことを喰っちまいます
バクはまったく悪(あく)もの喰いで
何んでも彼んでも喰うんです
心配されても その心配さえ
うまいうまいと喰いそうだ
バクは1人で喰い続けてる バクは1人で喰い続けてる
笑ってるあんたの夢を見るまで
バクの上に夢よ降り積め あんたの捨てたい夢よ降れ
バクは1人で喰い続けてる バクは1人で喰い続けてる
笑ってるあんたの夢を見るまで
バクです バクです 今の今からバクになる