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馳星周「少年と犬」 [読]

かつて13年間、ゴールデンを飼った。40代後半から50代の終わりまで、勤めていて苦しい時期だった。気持ちを落ち着かせてくれた、あのぬくもりは今も忘れない。
これは東北大震災に遭った犬が飼い主と別れ、何かを探して旅に出る。途中で出会った、若い男、泥棒、中年の夫婦、娼婦、老いた狩人、そして少年とのふれあいの物語。
あり得ない、とわかっていても涙なしでは読めなかった。珠玉の作品とは、このようなものをいうのだろう。

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カズオ・イシグロ「クララとお日さま」 [読]

日本出身(変な言い方)ノーベル賞作家の新作。
未来の格差社会では、子どもの養育のためにも人工知能を搭載したロボットが使われる。その一つのクララは病弱の少女ジョジーの「人工親友」として買われる。
学習能力に優れたクララが、ジョジーや周囲の人たちに受け入れられ、別れが来るまでの物語。サスペンス風に綴られ、一気に読まされる。
生きるとはどういうことなのか、ロボットのクララの「生き様」を通して、深い感動を与えてくれる。素晴らしい小説に出会った。

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三上修「電柱鳥類学」 [読]

鳥を研究する学問は森林鳥類学や河川鳥類学などというらしい。それにならって、電柱(電線)を利用する鳥を研究しようとして著者が造った言葉が本書のタイトルである。
電線に止まるのはどんな鳥? 電線のどこに止まる? なぜ止まる? どうして感電しない? 電柱に巣を作るのはだれ? 電力会社はそれをどうする?
科学ライブラリーシリーズの一冊というと難しそうに思うが、わかりやすい内容でとても楽しい。読み終わって電柱が気になって仕方がない。

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松原始「カラスは飼えるか」 [読]

もちろん、カラスの飼育方法を書いた本ではない。カラスの研究で有名な著者がウエブに連載した文章をまとめたもの。
学生のとき、屋久島で猿の生態調査を手伝った「人間レーダー」の話から始まって、カラスにまつわる話が、映画や小説、音楽など著者の幅広いうんちくを交えて展開していく。
肩のこらない、鳥に関する雑学の本だが、生き物に対する愛情があふれていて楽しい。

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伊集院静「いとまの雪」 [読]

赤穂浪士の話と聞けば是非もない。
よく知られたストーリーの通りに物語は進んでいくが、大石内蔵助の子どもの頃から始まるのと、密偵に大きな役割を与えているのが目新しい。
また、最初に城から逃げ出したとされる次席家老大野九郎兵衛と、討ち入り直後に逃亡したとされる足軽寺坂吉右衛門に新たな活躍の場を与えていて面白かった。
浪士47人全員の年齢が書かれているのもうれしい。それにしても、「忠臣蔵」というのはもう死語になったのだろうな。

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佐々木譲「雪に撃つ」 [読]

北海道警察シリーズの最新作。
チーム佐伯と準レギュラーになった長正寺機捜隊長が、今回は札幌雪まつりを舞台に、ヤクザから逃げる技能実習生を助ける。
優秀な刑事なのに、上層部の腐敗に目をつむらず閑職へ飛ばされた佐伯が、盗難車の捜査を足がかりに巨悪を暴いていく。
コロナで停滞しているとはいえ、いまや労働力として欠かせない技能実習生。彼らを巡ってヤクザや議員が利権をむさぼる。実際にありそうな話でとても面白かった。
佐伯の百合との関係や、実家の話も出てきて、シリーズはまだまだ続く。

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吉田千亜「孤塁」 [読]

東北大震災・原発事故から間もなく10年になる。放射能汚染は残り、復興は進まず、多くの住民が戻らないという。
当時、災害の最前線にいたのが地元双葉郡の消防士たちだった。この本は、彼ら125人のうち、著者が7年後に話を聞きことができた、66人の証言をまとめた記録である。
火事を消し、急病人を搬送することが本来の任務である彼らが、原発事故に巻き込まれ、「生きて帰れるか」という不安を抱えながら、情報不足と応援部隊が到着しないという、絶望的な状況の中で活動した様子が淡々と綴られている。
彼らのことは自衛隊やハイパーレスキュー隊、フクシマ50のようにマスコミには報じられなかった。彼らの行動を残す極めて貴重な、価値ある本だ。
付け加えると、高い放射能を浴びた彼らは避難所でも病院でも差別を受けたという。全く今のコロナの状況と同じだ。一体、日本人はどうなってしまったのだろう。

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方方「武漢日記」 [読]

コロナの拡大が止まらなくなってきた。
今年初めて新型コロナウイルスの感染がわかり、都市封鎖された中国の武漢。そこに住む作家が封鎖中の2ヶ月にわたって日記を書いた。
作家は反体制派と見なされているらしく、ブログに書いてはしばしば検閲官に削除されるが、その都度友人たちが違うやり方で発表を続けてきたらしい。そのおかげで、多くの人が日記を読むことが力になったらしい。
彼女は政府の隔離政策に全面的に同意し、従順に自粛生活を送っている。その中で、被害に合った人たちに思いを寄せ、家族の心配をし、友人の医師たちから仕入れた状況を毎日書いていく。
そして、初期に感染の防止に努力しなかった役人と、誤った判断をして多くの感染者を出しながら開き直る医者たちを痛烈に批判する。そこが検閲されるのだろう。
ネット社会の功罪がよく言われるが、このように書き、読まれるのはすばらしい。

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エリフ・シャファク「レイラの最後の10分38秒」 [読]

イスタンブールで暮らしたある娼婦の物語。
第二次大戦後、トルコで二人の妻を持つ男の最初の子として産まれたレイラは、理不尽にも実母と違うもう一人の妻の子として育てられ、長じては父の弟に乱暴される。
家出してイスタンブールに出るが、待っていたのは娼婦としての生活だった。そして、最期は頻発する娼婦殺しの被害者の一人となった。
ある研究によると、心臓が動かなくなってから脳波が停止するまで10分38秒かかった例があるという。それを踏まえて、殺されてから意識がなくなるまでの間にレイレが人生を思い返す形で、トルコの歴史を絡めて物語が進む。
これでは救いようのない話に見えるが、全くそうではない。5人の友達が登場し、レイラがいかに一生懸命に生きたか、そして最後は救われる姿が描かれる。
このような本は自分では見つけられない。新聞の書評で知ったのだが、印象深い一冊になった。

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池井戸潤「アルルカンと道化師」 [読]

この夏のドラマでも大人気だった、「倍返し」半沢直樹シリーズの第5作目。
今回は大阪が舞台で、人気のある絵画を巡って、出版社への融資と企業買収の話が展開していく。
結果は半沢の勝ちとお決まりなのに、ハラハラしながら引き込まれる。一息に軽く軽く読めて楽しかった。

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大沢在昌「暗躍領域」 [読]

キャリアでありながら所轄で刑事を続ける男、新宿鮫シリーズの第11作。
かばい続けてくれた上司が殉職し、恋人とも別れた鮫島のところに、新しい女性課長と新人刑事がやってくる。
帰国した中国残留孤児の二世、三世が組織する犯罪集団と、北朝鮮への密輸組織、さらに公安が絡んでストーリーが展開してゆく。いかにも実際ありそうな話だ。
シリーズはまだまだ続く。

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朝井まかて「グッドバイ」 [読]

幕末から明治にかけて活躍した女商人の物語。
長崎で油問屋の孫娘として育った主人公が、落ち目の店を継ぎ、外国との交易に活路を見いだしていく。
坂本龍馬、大隈重信、グラバーなども出てきて、なかなか面白かった。
新聞に連載されていたころは今ひとつのように思ったが、まとめて読むとまた感じが違うものだ。

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宮部みゆき「きたきた捕物帖」 [読]

この人の頭の中はどうなっているのだろう、といつも思う。毎回素晴らしい小説を提供してくれる作者の、楽しみな新シリーズが始まった。
江戸の深川で、岡っ引きの親分に拾われて育った16歳の少年が、親分の死によって十手持ちの見習いとして成長していく物語。
今回は登場人物の紹介と題名の由来を示す、4編の出来事が収録されている。盲目のおかみさん、長屋の管理人、旗本の用人、若い同心、そして相棒となる男。だれもが主人公のような魅力いっぱいで、次作が待ち遠しい。

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パオロ・ジョルダーノ「コロナの時代の僕ら」 [読]

コロナの第2波は、新聞で読むなどの限りでは少し収まってきているようにも見えるが、実際のところはどうなのだろう。さっぱりわからない。こちらも少し疲れて、麻痺してきた。
この本はイタリア人の科学者で、作家としても人気のあるらしい人が書いたエッセイ集。中国の次に感染が広がったイタリアで、2月末から3月にかけて、コロナと向き合った日々を綴っている。
感染の広がりをビリヤードの玉突きに例えてわかりやすく解説し、収束に向かう道筋を示している。そして、今回の禍は、人類が便利さを追求して環境破壊を続けている結果であり、このままではコロナが収束した後も再び新たな脅威が襲ってくると警告する。
そのときのために大切なことは、今回の出来事を通じて私たちが知ったことを、決して忘れないことだという。政治家や専門家たちの言動、行政施策の功罪、医療や介護関係者への感謝と彼らに対する誹謗や中傷、感染者への差別等々。いろいろな示唆に富む本だ。
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浅田次郎「大名倒産」 [読]

これは目茶苦茶おもしろかった。腹を抱えて笑い、しんみりする。図書館などひと目があるところでは読まない方がいい。
江戸時代も末期、諸藩は商人から多大の借金を抱えている。そのひとつ、越後の譜代大名が計画倒産を図る。
先代殿様が家督を妾腹の子に譲り、借金を返さずに貯め込む。幕府に改易させて、跡取りだけに詰め腹を切らせ、貯めた金銀を家臣に分配して終わりにしようというもの。
何も知らない真面目な若様の奮闘に、やがて次々と味方が現れる。孔子の「徳は弧ならず、必ず隣あり」の物語。

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東野圭吾「クスノキの番人」 [読]

パワースポットとして人気のある楠の大樹には、夜に密かに訪れて祈る、というもう一つの大切な役割があった。
その管理を任された私生児の若者が主人公。経験を重ねるうちに楠の大きな力が明らかになってくる。
殺人事件は出てこない。とはいえ、そこはミステリー作家、最後までいろいろな仕掛けがある。
「ナミヤ雑貨店の奇跡」のように、とてもあたたかな気持ちになる作品だ。

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ラーラ・プレスコット「あの本は読まれているか」 [読]

後にノーベル賞を受けた、旧ソ連の作家パステルナークが書いた「ドクトル・ジバゴ」。ロシア革命を批判する作品であると見なされ、母国で出版の見込みがない。
冷戦時代のさなか、アメリカがこの本を、体制の攪乱に利用しようとソ連での流通を画策する。
CIAの女スパイたちの暗躍とパステルナークたちの苦悩が交差して綴られていく。男にはわかりにくい機微もあるが、最後の最後までなかなか面白かった。

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伊東潤「茶聖」 [読]

市立図書館が解禁になったが、椅子はすべて撤去されている。雑誌や新聞もゆっくり読めず、滞在時間も30分以内とされているので、書架を巡るのもままならない。
手に取って借りなかった本は消毒用の箱に入れる。現実的には予約した本の受け取りに限られてしまい、本の倉庫と化して、くつろげる場所ではなくなった。当分はやむを得ないことなのだが、楽しみがまた一つ減った。
この本は、武力で全国平定を目指す豊臣秀吉に対し、茶の道を広げることで静穏な世の中を目指した千利休との確執を書いた小説。大がかりだが、妻との会話など鼻について白々しい。

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川越宗一「熱源」 [読]

コロナ退治のために、医療をはじめ多くの皆様が必死で戦って下さっているというのに、こちらは健康のためにと称して毎日散歩し、ブログを書く。自己嫌悪だ。
なんて言いながら今日も出かけた近場で、なんとミゾゴイを見た。もちろん初めてでルンルンなのだから、実にいい加減なものだ。
                  *
この本は樺太(サハリン)を舞台にした、アイヌとポーランドの男の物語。
明治維新後、日本人に同化を迫られるアイヌ人。ロシア占領下の母国で反乱を企てたとして流刑されたポーランド人。絶望的な中で彼らが必死に生きていく。
冒頭から引き込まれる。太平洋戦争で日本が敗戦を受け入れた後に樺太に侵入してきたソ連軍。その女兵士の話から始まって、時代が遡る。そして、最後は再び彼女が全く予想できないかたちで登場する。
実に面白かった。直木賞受賞にふさわしい。
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天童荒太「巡礼の家」 [読]

苦しみと悲しみを抱えてさまようお遍路さんのための宿が道後温泉にある。
災害で両親が行方不明となった少女が、預けられていた親戚から逃げ出して、この宿の女将に助けられる。
彼女がこの家での経験を通して強く育って行く物語。
いつも弱い者に寄り添う作者の本領が発揮されたとてもいい小説だ。前作の「ペインレス」が今ひとつだったので、よけいそう思う。
「みんな生まれて死ぬまで、幸せと救いを求めて、この世を旅する巡礼じゃ」

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黒川博行「桃源」 [読]

所轄でオレオレ詐欺の捜査に追われるノンキャリ刑事と、不祥事で府警本部から飛ばされたキャリア刑事。このコンビが新たに担当することになったのが沈没船詐欺。
九州沖に中国の明清時代の交易船が沈没している。そこから財宝を引き上げて大もうけする。そのための費用と称して騙しとるという、トレジャーハンティング詐欺。
二人の絶妙の会話と、リアルに書かれたなじみ深い大阪の各地。とっても面白かった。是非、シリーズ化して欲しい。

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佐々木譲「抵抗都市」 [読]

1910年代の架空都市・東京。来日したロシア皇太子暗殺未遂事件をきっかけにロシアの属国となっている。
川で身元不明の死体があがる。日露戦争から復員して警視庁の刑事となった男が、地元警察署の老刑事と共同で捜査に当たる。
ロシアの支配から独立しようとする複雑な背景の中で、刑事たちは被害者がスパイであることを突き止め犯人に迫る。
壮大な設定だが、最後はただの捕物帖で終わってしまい、いまいち物足りなかった。

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柚月裕子「検事の信義」 [読]

お気に入りの作家の一人、柚月裕子の新刊(とはいっても出版されたのは半年も前だが)。
「罪をまっとうに裁かせることが正義」を信条とする検事、佐方貞人シリーズの4編。ただ、これまでとは様子が少し違って、3編は苦悩する佐方が描かれる。
上司の不祥事がからむ「裁きを望む」、警察内部の不祥事がからむ「恨みを刻む」、検察内部の不祥事が絡む「正義を質す」。作者も年輪を重ねた、ということか。
それでも、最後の「信義を守る」は佐方貞人の本領を発揮させたものなっている。認知症の母親を殺害し、逃亡しようとした息子の裁判を担当した佐方がたどり着いた真実とは・・・。

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佐藤賢一「ナポレオン」 [読]

皇帝ナポレオンはフランス人ではなかったのだ。小男(とはいっても167センチだったらしいが)なのと、薄毛を気にしていたというのも知らなかった。
どちらもどうでもいい話だが、ナポレオンの生涯を小説にした本。集団でのケンカで負けたことのない子どもの頃から、追放されてセント・ヘレナ島で死去するまでが書かれている。
3巻1,500ページにわたる大作だが、戦闘シーンや、生涯にかかわる3人の女性の話、肉親や政治家との駆け引きなど飽きない。面白かった。

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池井戸潤「ノーサイド・ゲーム」 [読]

6月に出版されてすぐに予約して、ようやく順番が回ってきた。ただ、南アフリカに負けた直後だったのが少し残念。
社会人ラグビーで、存亡の危機に瀕した弱小企業チームを立て直す物語。勤め人の苦労と選手の浮き沈みが絡み合う筋立てで、一気に読めてとても面白かった。
フィクションとはいえ、現在の日本ラグビーフットボール協会の運営を痛烈に批判していて、それも愉快。ワールドカップの盛り上がりをぜひ今後も継続できるよう取り組んで欲しいものだ。

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山川徹「国境を越えたスクラム」 [読]

ラグビーの日本代表チームが1930年に初めて結成されたとき、台湾出身の留学生が出場していた。その彼は4年後には日本代表の主将を務める。そして、今の主将リーチマイケルはニュージーランド出身だ。
この本は副題のとおり、日本代表になった外国出身の選手たちについて書かれている。これを読むと、彼らが「日本」の代表にふさわしいことがよくわかる。
我が国は古代から外国の文化を取り入れて発展してきた。スポーツでも同じだ。素敵な文章があったので書いておく。
「組織や地域の風土をつくるのは、土の人と風の人だといわれる。土の人は、土地や組織に根ざして文化や慣習を守り、受け継いでいく。一方の外部から入ってくる風の人は、新たな価値観や考え方をもたらしていく。」
さあ、次戦は明後日、相手は最強アイルランドだ。行け!
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東野圭吾「希望の糸」 [読]

新参者加賀恭一郎は合田雄一郎と並んでお気に入りの主人公。そのシリーズの書き下ろし新作。そうとは知らずに予約していて、とても得をした気分。
加賀は捜査一課に復帰していて従弟松宮脩平の上司。今回はその松宮が主役。
和菓子のカフェの女主人が殺される。簡単に犯人を明かしたあとに、様々な親子の様子が綴られていく。一息に読んで、とても面白かった。

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サーシャ・バイン「心を強くする」 [読]

もうじき全米オープンテニスが始まる。昨年、大坂なおみが優勝したときは鮮烈だった。そして、今年の全豪でグランドスラム大会を連覇したあと、コーチを解任したのは衝撃だった。
そのコーチが書いた本。大坂やセリーナ・ウィリアムズのコーチとして働きながら学んだことや、彼女たちにアドバイスしてきたことを50の項目に分けて記している。
「いつも心にプランBを」、「良い嫉妬、悪い嫉妬」、「あなたは怖い、誰もが怖い」など内容も面白かったが、やはりなぜ大坂と分かれたのかを知りたくて読んだ。
「だれかの役に立っているときが、いちばん幸せ」というこのコーチは、セルビア人の父と祖父の不審な死にあうという苦労人だが、実に生真面目だ。おそらく若い大坂なおみにとって、テニス一筋の息苦しい生活が続いたので少し休憩したい、というところなのではないか。
その後、不調が続いているが、もう一度テニスが強くなりたいという願望が強くなったとき、再びこのコーチとやり直すのではないか。そして、サーシャ自身もそのときを待っているように思える。
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横山秀夫「ノースライト」 [読]

北側から射す淡い光をふんだんに取り込んだ家。「あなたが住みたい家を」と依頼された建築士がバブル経済時代に造った自信作。
羽振りをきかせていた男は、バブルの崩壊とともに妻子と別れ落ちぶれる。見かねた旧友に雇われるが、かつての自慢の家に依頼主が住んでいないことがわかり、犯罪のにおいも漂う。
旧友が美術館建設のコンペに参加することを巡って、男たちの葛藤と友情、家族への愛情物語が展開していく。
謎解きの設定が少し苦しい気もするが、警察小説でならしているだけあって十分に面白かった。主人公が鳥好きでベニマシコやキビタキが出てくるのもうれしい。

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佐川光晴「駒音高く」 [読]

藤井聡太の登場で将棋界が賑わう。ペーパー四段の一ファンとしても喜ばしい。
これはその将棋界にまつわる7作の短編集。将棋会館の掃除のおばちゃん、棋士を目指す子どもたち、夢を絶たれた少年、女性初を目指す少女と母親、恋する若者、観戦記者、引退する名棋士のエピソードからなる。
どれも優しさがあふれていて気持ちいい。ただ、現在の将棋には欠かせないAIに関わる話がないのが残念だが、それを引いても面白かった。

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