馳星周「少年と犬」 [読]
カズオ・イシグロ「クララとお日さま」 [読]
三上修「電柱鳥類学」 [読]
松原始「カラスは飼えるか」 [読]
伊集院静「いとまの雪」 [読]
佐々木譲「雪に撃つ」 [読]
吉田千亜「孤塁」 [読]
東北大震災・原発事故から間もなく10年になる。放射能汚染は残り、復興は進まず、多くの住民が戻らないという。
当時、災害の最前線にいたのが地元双葉郡の消防士たちだった。この本は、彼ら125人のうち、著者が7年後に話を聞きことができた、66人の証言をまとめた記録である。
火事を消し、急病人を搬送することが本来の任務である彼らが、原発事故に巻き込まれ、「生きて帰れるか」という不安を抱えながら、情報不足と応援部隊が到着しないという、絶望的な状況の中で活動した様子が淡々と綴られている。
彼らのことは自衛隊やハイパーレスキュー隊、フクシマ50のようにマスコミには報じられなかった。彼らの行動を残す極めて貴重な、価値ある本だ。
付け加えると、高い放射能を浴びた彼らは避難所でも病院でも差別を受けたという。全く今のコロナの状況と同じだ。一体、日本人はどうなってしまったのだろう。
当時、災害の最前線にいたのが地元双葉郡の消防士たちだった。この本は、彼ら125人のうち、著者が7年後に話を聞きことができた、66人の証言をまとめた記録である。
火事を消し、急病人を搬送することが本来の任務である彼らが、原発事故に巻き込まれ、「生きて帰れるか」という不安を抱えながら、情報不足と応援部隊が到着しないという、絶望的な状況の中で活動した様子が淡々と綴られている。
彼らのことは自衛隊やハイパーレスキュー隊、フクシマ50のようにマスコミには報じられなかった。彼らの行動を残す極めて貴重な、価値ある本だ。
付け加えると、高い放射能を浴びた彼らは避難所でも病院でも差別を受けたという。全く今のコロナの状況と同じだ。一体、日本人はどうなってしまったのだろう。
方方「武漢日記」 [読]
コロナの拡大が止まらなくなってきた。
今年初めて新型コロナウイルスの感染がわかり、都市封鎖された中国の武漢。そこに住む作家が封鎖中の2ヶ月にわたって日記を書いた。
作家は反体制派と見なされているらしく、ブログに書いてはしばしば検閲官に削除されるが、その都度友人たちが違うやり方で発表を続けてきたらしい。そのおかげで、多くの人が日記を読むことが力になったらしい。
彼女は政府の隔離政策に全面的に同意し、従順に自粛生活を送っている。その中で、被害に合った人たちに思いを寄せ、家族の心配をし、友人の医師たちから仕入れた状況を毎日書いていく。
そして、初期に感染の防止に努力しなかった役人と、誤った判断をして多くの感染者を出しながら開き直る医者たちを痛烈に批判する。そこが検閲されるのだろう。
ネット社会の功罪がよく言われるが、このように書き、読まれるのはすばらしい。
今年初めて新型コロナウイルスの感染がわかり、都市封鎖された中国の武漢。そこに住む作家が封鎖中の2ヶ月にわたって日記を書いた。
作家は反体制派と見なされているらしく、ブログに書いてはしばしば検閲官に削除されるが、その都度友人たちが違うやり方で発表を続けてきたらしい。そのおかげで、多くの人が日記を読むことが力になったらしい。
彼女は政府の隔離政策に全面的に同意し、従順に自粛生活を送っている。その中で、被害に合った人たちに思いを寄せ、家族の心配をし、友人の医師たちから仕入れた状況を毎日書いていく。
そして、初期に感染の防止に努力しなかった役人と、誤った判断をして多くの感染者を出しながら開き直る医者たちを痛烈に批判する。そこが検閲されるのだろう。
ネット社会の功罪がよく言われるが、このように書き、読まれるのはすばらしい。
エリフ・シャファク「レイラの最後の10分38秒」 [読]
イスタンブールで暮らしたある娼婦の物語。
第二次大戦後、トルコで二人の妻を持つ男の最初の子として産まれたレイラは、理不尽にも実母と違うもう一人の妻の子として育てられ、長じては父の弟に乱暴される。
家出してイスタンブールに出るが、待っていたのは娼婦としての生活だった。そして、最期は頻発する娼婦殺しの被害者の一人となった。
ある研究によると、心臓が動かなくなってから脳波が停止するまで10分38秒かかった例があるという。それを踏まえて、殺されてから意識がなくなるまでの間にレイレが人生を思い返す形で、トルコの歴史を絡めて物語が進む。
これでは救いようのない話に見えるが、全くそうではない。5人の友達が登場し、レイラがいかに一生懸命に生きたか、そして最後は救われる姿が描かれる。
このような本は自分では見つけられない。新聞の書評で知ったのだが、印象深い一冊になった。
第二次大戦後、トルコで二人の妻を持つ男の最初の子として産まれたレイラは、理不尽にも実母と違うもう一人の妻の子として育てられ、長じては父の弟に乱暴される。
家出してイスタンブールに出るが、待っていたのは娼婦としての生活だった。そして、最期は頻発する娼婦殺しの被害者の一人となった。
ある研究によると、心臓が動かなくなってから脳波が停止するまで10分38秒かかった例があるという。それを踏まえて、殺されてから意識がなくなるまでの間にレイレが人生を思い返す形で、トルコの歴史を絡めて物語が進む。
これでは救いようのない話に見えるが、全くそうではない。5人の友達が登場し、レイラがいかに一生懸命に生きたか、そして最後は救われる姿が描かれる。
このような本は自分では見つけられない。新聞の書評で知ったのだが、印象深い一冊になった。
池井戸潤「アルルカンと道化師」 [読]
大沢在昌「暗躍領域」 [読]
朝井まかて「グッドバイ」 [読]
宮部みゆき「きたきた捕物帖」 [読]
パオロ・ジョルダーノ「コロナの時代の僕ら」 [読]
コロナの第2波は、新聞で読むなどの限りでは少し収まってきているようにも見えるが、実際のところはどうなのだろう。さっぱりわからない。こちらも少し疲れて、麻痺してきた。
この本はイタリア人の科学者で、作家としても人気のあるらしい人が書いたエッセイ集。中国の次に感染が広がったイタリアで、2月末から3月にかけて、コロナと向き合った日々を綴っている。
感染の広がりをビリヤードの玉突きに例えてわかりやすく解説し、収束に向かう道筋を示している。そして、今回の禍は、人類が便利さを追求して環境破壊を続けている結果であり、このままではコロナが収束した後も再び新たな脅威が襲ってくると警告する。
そのときのために大切なことは、今回の出来事を通じて私たちが知ったことを、決して忘れないことだという。政治家や専門家たちの言動、行政施策の功罪、医療や介護関係者への感謝と彼らに対する誹謗や中傷、感染者への差別等々。いろいろな示唆に富む本だ。
この本はイタリア人の科学者で、作家としても人気のあるらしい人が書いたエッセイ集。中国の次に感染が広がったイタリアで、2月末から3月にかけて、コロナと向き合った日々を綴っている。
感染の広がりをビリヤードの玉突きに例えてわかりやすく解説し、収束に向かう道筋を示している。そして、今回の禍は、人類が便利さを追求して環境破壊を続けている結果であり、このままではコロナが収束した後も再び新たな脅威が襲ってくると警告する。
そのときのために大切なことは、今回の出来事を通じて私たちが知ったことを、決して忘れないことだという。政治家や専門家たちの言動、行政施策の功罪、医療や介護関係者への感謝と彼らに対する誹謗や中傷、感染者への差別等々。いろいろな示唆に富む本だ。
浅田次郎「大名倒産」 [読]
東野圭吾「クスノキの番人」 [読]
ラーラ・プレスコット「あの本は読まれているか」 [読]
伊東潤「茶聖」 [読]
川越宗一「熱源」 [読]
コロナ退治のために、医療をはじめ多くの皆様が必死で戦って下さっているというのに、こちらは健康のためにと称して毎日散歩し、ブログを書く。自己嫌悪だ。
なんて言いながら今日も出かけた近場で、なんとミゾゴイを見た。もちろん初めてでルンルンなのだから、実にいい加減なものだ。
*
この本は樺太(サハリン)を舞台にした、アイヌとポーランドの男の物語。
明治維新後、日本人に同化を迫られるアイヌ人。ロシア占領下の母国で反乱を企てたとして流刑されたポーランド人。絶望的な中で彼らが必死に生きていく。
冒頭から引き込まれる。太平洋戦争で日本が敗戦を受け入れた後に樺太に侵入してきたソ連軍。その女兵士の話から始まって、時代が遡る。そして、最後は再び彼女が全く予想できないかたちで登場する。
実に面白かった。直木賞受賞にふさわしい。
なんて言いながら今日も出かけた近場で、なんとミゾゴイを見た。もちろん初めてでルンルンなのだから、実にいい加減なものだ。
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この本は樺太(サハリン)を舞台にした、アイヌとポーランドの男の物語。
明治維新後、日本人に同化を迫られるアイヌ人。ロシア占領下の母国で反乱を企てたとして流刑されたポーランド人。絶望的な中で彼らが必死に生きていく。
冒頭から引き込まれる。太平洋戦争で日本が敗戦を受け入れた後に樺太に侵入してきたソ連軍。その女兵士の話から始まって、時代が遡る。そして、最後は再び彼女が全く予想できないかたちで登場する。
実に面白かった。直木賞受賞にふさわしい。
天童荒太「巡礼の家」 [読]
黒川博行「桃源」 [読]
佐々木譲「抵抗都市」 [読]
柚月裕子「検事の信義」 [読]
佐藤賢一「ナポレオン」 [読]
池井戸潤「ノーサイド・ゲーム」 [読]
山川徹「国境を越えたスクラム」 [読]
ラグビーの日本代表チームが1930年に初めて結成されたとき、台湾出身の留学生が出場していた。その彼は4年後には日本代表の主将を務める。そして、今の主将リーチマイケルはニュージーランド出身だ。
この本は副題のとおり、日本代表になった外国出身の選手たちについて書かれている。これを読むと、彼らが「日本」の代表にふさわしいことがよくわかる。
我が国は古代から外国の文化を取り入れて発展してきた。スポーツでも同じだ。素敵な文章があったので書いておく。
「組織や地域の風土をつくるのは、土の人と風の人だといわれる。土の人は、土地や組織に根ざして文化や慣習を守り、受け継いでいく。一方の外部から入ってくる風の人は、新たな価値観や考え方をもたらしていく。」
さあ、次戦は明後日、相手は最強アイルランドだ。行け!
この本は副題のとおり、日本代表になった外国出身の選手たちについて書かれている。これを読むと、彼らが「日本」の代表にふさわしいことがよくわかる。
我が国は古代から外国の文化を取り入れて発展してきた。スポーツでも同じだ。素敵な文章があったので書いておく。
「組織や地域の風土をつくるのは、土の人と風の人だといわれる。土の人は、土地や組織に根ざして文化や慣習を守り、受け継いでいく。一方の外部から入ってくる風の人は、新たな価値観や考え方をもたらしていく。」
さあ、次戦は明後日、相手は最強アイルランドだ。行け!
東野圭吾「希望の糸」 [読]
サーシャ・バイン「心を強くする」 [読]
もうじき全米オープンテニスが始まる。昨年、大坂なおみが優勝したときは鮮烈だった。そして、今年の全豪でグランドスラム大会を連覇したあと、コーチを解任したのは衝撃だった。
そのコーチが書いた本。大坂やセリーナ・ウィリアムズのコーチとして働きながら学んだことや、彼女たちにアドバイスしてきたことを50の項目に分けて記している。
「いつも心にプランBを」、「良い嫉妬、悪い嫉妬」、「あなたは怖い、誰もが怖い」など内容も面白かったが、やはりなぜ大坂と分かれたのかを知りたくて読んだ。
「だれかの役に立っているときが、いちばん幸せ」というこのコーチは、セルビア人の父と祖父の不審な死にあうという苦労人だが、実に生真面目だ。おそらく若い大坂なおみにとって、テニス一筋の息苦しい生活が続いたので少し休憩したい、というところなのではないか。
その後、不調が続いているが、もう一度テニスが強くなりたいという願望が強くなったとき、再びこのコーチとやり直すのではないか。そして、サーシャ自身もそのときを待っているように思える。
そのコーチが書いた本。大坂やセリーナ・ウィリアムズのコーチとして働きながら学んだことや、彼女たちにアドバイスしてきたことを50の項目に分けて記している。
「いつも心にプランBを」、「良い嫉妬、悪い嫉妬」、「あなたは怖い、誰もが怖い」など内容も面白かったが、やはりなぜ大坂と分かれたのかを知りたくて読んだ。
「だれかの役に立っているときが、いちばん幸せ」というこのコーチは、セルビア人の父と祖父の不審な死にあうという苦労人だが、実に生真面目だ。おそらく若い大坂なおみにとって、テニス一筋の息苦しい生活が続いたので少し休憩したい、というところなのではないか。
その後、不調が続いているが、もう一度テニスが強くなりたいという願望が強くなったとき、再びこのコーチとやり直すのではないか。そして、サーシャ自身もそのときを待っているように思える。